薬用歯磨き剤のCMもよく流れていますので、歯周病という名前は皆さまご存知だと思います。
今までブログで歯周病の説明は何回もしていますが、何故歯周病で歯を失う人が少なくならないのでしょうか?
それはこの病気の原因を多くの患者さまが理解していないからです。歯垢、歯石という原因を完全に除去しないと歯周病の進行は止まりません。
簡単に言えば歯石を完全に除去してプラークコントロールしていけばいいのです。では何故歯周病の患者さまが減らないのでしょうか?
答えは歯石が完全に取れていないことと歯みがきが上手に出来ていないからです。
歯石が完全に取れていないことは、歯科医院に問題があります。患者さまが歯周病を治してくださいという目的で歯科医院を訪れれば歯科医師は歯周病について正しい情報を患者様に与えなければなりません。
同業者の非難はなるべく避けたいところですが、当院で歯周病の説明をしますと前の歯科医院ではそういう説明を受けていないという方が多いです。
そして原因である歯石が取れていないことも多いです。ここが日本人の歯周病が減らない大きな原因だと思います。
では何故歯科医院できちんと歯石を取られていないことが多いのか考えてみましょう。
歯石はサンゴのように繁殖していき歯の根っこの深いところまで延びていきますので簡単に取れないことが多いのです。
歯肉の中まで入り込んだ歯石を取るには術者の訓練も必要です。
歯周外科手術も必要になることもあります。
このように説明をしていけば、歯周病が減らない原因は歯科医院の治療に問題があるということになりますが、歯科医院を責められない理由があります。
友人の話を思い出しながらこの点を説明いたしましょう。
私は学生時代は本当に勉強をしない、できない学生でした。
開業してからは患者さまに責任を持たないといけませんので、有料のセミナーを数多く受けてきました。30年前に歯周病はアメリカで歯周病を学ばれた佐藤直志先生の半年セミナーをうけました。毎月1回上京して土、日のセミナーを半年受けました。それからもずっと歯周病の勉強を続けています。
さて友人の話ですが、大学の同期のH君ですけど、彼は大分で開業しています。
15年くらい前に会ったときに私が歯周病のセミナーを受けた話などをしました。H君は私と違って学生時代からできる男です。よし俺も歯周病のセミナーを受けてみるといって佐藤先生ではなく別な歯周病のセミナーをやはり何ヶ月もかけて受けました。(H君が受講したのはアメリカのMyron Nevinsに師事された小野義弘先生のセミナーです。私も現在は小野先生が主宰されるJIADS CLUBに入会してこのCLUBのコンセプトを学んでいます。)
そしてH君が言った言葉は
「内山、この治療を保険でやっていたら赤字になるぞ!」
というものでした。実際彼は歯周病の外科手術には手を出さずに対症療法で良心的に患者さまをみていきたいと800万円もするレーザーを購入して歯周病治療に使っています。こういう彼の良心的な態度には頭が下がります。
話が長くなりましたが、歯周病治療は経営的に苦しいところがあるのは事実なのです。だから本格的に治療する医院が少ないという現実があると思います。経営的に十分やっていけると思われた保険制度の時もあったのです。
それは前回のちょっと何年かの話で去年の改正で逆戻りしてしまいました。
真面目に歯周外科をやろうとする歯科医師のモチベーションを下げるのに十分過ぎる貢献?した改正です。外科手術料がひどいときには以前の30%しかないのです。
丁寧に歯石を除去して(必要なら外科手術も行って)歯みがき指導に時間をかけてやっていけば歯周病は根絶できるのにと思いますが、今の保険制度では歯周病を根絶させる前に歯科医院がつぶれてしまうかも知れませんね。
しかし内山は根気よく歯周病を治したいという患者さまにはたとえ経営的に厳しくても力になりたいと思っていますから、歯周病でお困りの患者さまご安心ください。